「潰瘍性大腸炎」「UC(Ulcerative colitis)」は、大腸の粘膜がただれて下痢、出血や腹痛をきたす原因不明の病気です。

クローン病とともに炎症性腸疾患 (IBD:Inflammatory bowel disease)に分類されます。
症状がよくなってもまた自然に悪化することも多く、継続して治療を受けることが重要です。

現在、日本で10万人がこの病気にかかっています。
多くは15〜30歳に症状が出始めますが、50〜70歳にも見られます。

潰瘍性大腸炎になる原因

世界中で研究が進められていますが、まだ結論は出ていません。
元々この病気になる体質を持った人に様々な環境的なものが作用し、体を守る免疫に異常を来して炎症がおこると言われています。

これらの環境的なものの重要性についても賛否両論で、科学的根拠がしっかりしているわけではありません。
一部の痛み止め薬や、喫煙患者さんが禁煙する時は注意が必要です。

潰瘍性大腸炎の症状

粘液と血の混ざった便、下痢、腹痛などが潰瘍性大腸炎の主な症状です。
そしてこのような症状が続いたり繰り返されたりします。

よくある腸炎でも似たような症状がみられますが、長く続いたり繰り返したりすることはあまりありません。

潰瘍性大腸炎の診断

基本的に大腸だけに生じるので、大腸カメラとなります。
病気になる部分は主に直腸から出来て連続して大腸全体に広がっていきます。
診断後も大腸癌の危険が少し高いので、定期的な大腸カメラが勧められています。

潰瘍性大腸炎の治療

アミノサリチル酸製剤の内服で、大腸の炎症を抑える作用があります。

ASA製剤には、サラゾスルファピリジン(SASP)[商品名・サラゾピリン]とメサラジン(5-ASA)[商品名・ペンタサ]があります。

5-アミノサリチル酸(メサラジン(5-ASA)[商品名・ペンタサ注腸]を直接肛門から腸へ投与する薬であり、内服薬より効率よく腸に働きます。

液状の注腸薬はS状結腸からもう少し奥までの炎症を抑える効果があるとされています。

ステロイドの注腸薬(炎症を抑える作用があるステロイド薬を直接肛門から腸へ投与する薬)はS状結腸からもう少し奥までの、坐薬は直腸の炎症を抑える効果があるとされています。

免疫抑制薬は、これまで副作用の心配から、あまり広く使われていませんでした。
しかしステロイドの効果が得られない場合、効果があっても減らしたり止めたりするとまた悪くなる場合などに、大変有用な薬剤です。

副作用の点でも、ステロイドを長期間使うよりも有利と考えられています。
いずれも有効な薬剤ですので、どれを選んでも間違いと言うことはありません。

患者さんにあわせて効果、使いやすさ、副作用を考慮しながら使い分けます。
白血球除去療法は、透析にて炎症を起こす免疫細胞を血液の中から取り除く治療法で、薬物療法と共に行われます。

重症と診断される症例は、高熱や貧血など強い全身症状を伴っており、単に腸の治療だけでは不十分です。

そのため入院して、絶食にして点滴による栄養補給や十分な量のステロイドを注射することが必要です。

また、重症例では緊急手術が必要となることも少なくありません。

外科手術が必要な理由

重症(穿孔、大出血、内科治療が効かない重症の炎症など)、大腸がん合併、難治例(薬の副作用や繰り返す入院のために社会生活ができない、重い腸管外合併症があるなど)で、最も多いのは難治です。

重症や大腸がん合併の患者さんは早急に手術を行い、難治の患者さんは手術時期を相談して決めます。

潰瘍性大腸炎の予後

普通の人と同じぐらい生きることができます。
ただし、繰り返し病気をおこし、色々な薬を使ったり、手術を受けたり、入退院を繰り返したりすると、それだけ生活の質を損ねます。

ですから、普段からきちんとした治療を受け、よい状態を維持することが大切です。

病変の範囲が広い場合は、長い年月を経ると大腸がんの発生する危険が、普通の人よりも高くなることが知られています。定期的な検査をお受けになるほうがよいでしょう。

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院長 浅井 陽