「クローン病」「CD(Crohn’s Disease)」は最初に報告した医師(ブリル・バーナード・クローン)の名前に由来しています。

クローンと聞いてクローン技術、クローン羊を思い浮かべると思いますがこれとは関係ありません。
クローン病は原因不明で、若くから発病し、治ったり悪くなったりする大変な病気の1つです。

潰瘍性大腸炎とともに炎症性腸疾患 (IBD:Inflammatory bowel disease)に分類されます。 口から肛門までの消化管のどの部位にも繰り返す炎症を起こし、小腸・大腸、肛門周囲によくできます。

現在,日本で3万人がこの病気になっています。
若い年代で病気が起こり、男性では20代〜30代前半、女性では10代後半〜20代で症状が出始める人が多いです。

クローン病になる原因は、いまだにわかっていません。

遺伝的なものと食事や生活習慣等が関与して腸粘膜の免疫が障害されて炎症が起きると考えられています。

動物性蛋白と脂肪を多く含むファーストフードが原因の一つといわれ、タバコも病気を起こす原因と考えられています。

クローン病の症状

お腹の調子が悪くなり、右下腹部の痛みが出たり、下痢したり、血の混じった便が出たり、熱が出たり、体重が減ったり、貧血気味になったりします。

肛門周囲に症状が出る人も1/3程います。
症状を繰り返して起こし、日常生活において色々な面で悪い影響が出て、生活の質の低下が起こります。

また、関節炎・皮膚・眼の症状等も出る人がいます。

クローン病の診断

病気の出来やすい部位が大腸と小腸であるため、バリウムをお尻から入れる注腸検査か大腸カメラ、小腸造影検査を行います。

診断が確定しない場合は胃カメラやカプセル内視鏡も行う事があります。

クローン病の治療は、残念ながら現時点で完全に治す方法がありません。

食事療法は、現在、クローン病において、効果的であるとされています。脂肪を食べてよい量は、各施設により食事指導が異なりますが、1日20~30g以下と言われています。

食事制限が厳しくて食べられないものが結構あります。
成分栄養剤を飲む方法もあります。

薬の治療としては、5-アミノサリチル酸が大腸炎や回腸炎に効果がみられる事があります。

ステロイドは熱や下痢、腹痛を改善し、即効性がありますが、長期的な使用は感染症や肛門病変を悪くさせてしまいます。

メトロニダゾールは感染や肛門周囲の病変に対し有効であるが、長期使用では神経障害等の副作用が見られます。

免疫抑制剤はクローン病に対して効果あるが、3~6カ月間効果が現れず、アレルギー、膵炎、白血球減少の副作用があり、注意が必要です。

新しい治療としては腫瘍壊死因子を阻害するモノクローナル抗体,インフリキシマブが,他の治療が効かなかったクローン病(特に瘻孔を伴う)に注射で用いらますが、長期の効果および副作用は明らかになっていません。

白血球除去療法は、透析にて炎症を起こす免疫細胞を血液の中から取り除く治療法で、薬物療法と共に行われます。

手術は積極的には行われません。

理由としては、病気の部位が飛び飛びに現れるケースが多く、切る部分が多くなる事や手術でつなぎ合わせたところからまた病気になるという傾向があり、またそこが狭くなることが多いからです。

5年後にまた手術する人は、30%、10年で70%と非常に高く、複数回の手術を行う可能性があります。

ただし、腸が詰まった状態の腸閉塞、腸が破れたり穴が開いた場合、大量の出血、ひどい排便障害、癌の時は手術をしないといけません。
約70%のクローン病患者が最終的に手術を必要とします。

クローン病の予後

比較的良く、クローン病が関係した死亡率は非常に低く、減少し続けています。

しかし、病気が治まって長期間症状が出なくても、クローン病が治ることは珍しく、再び症状が出現する特徴があります。

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院長 浅井 陽介